長期修繕計画は手段であって目的ではない

マンションも経年と伴に劣化していきます。今後見込まれる工事とその予定額を把握するために、長期修繕計画を作成することが推奨されています。修繕計画は将来30年程度の計画として、5年周期で見直すのがよいとされています。

ただ、マンションは住民が生活をするためにそれを保全をするのであって、マンションを保全するために住民がそこに住んでいる訳ではありません。長期修繕計画は適正な修繕積立金の金額を試算するための手段であって目的ではありません。本来は、まだ使える設備であるのに計画時期通りに更新工事をしなければならないというものでもありません。

また、30年後の工事で大幅な資金不足が見込まれるからと言って直ちに修繕積立金を大幅に値上げするかどうかは、また別の判断が必要です。現在住んでいる住民のうちどの程度の割合の人がそのマンションに住み続けているかは分かりませんし、30年後であれば既に死亡している人がいるかもしれません。つまり30年後に工事の恩恵を受けるのは将来の別の住民である可能性も高く、他人のために現在の住民が大幅な修繕積立金の値上げを受け入れるかどうかは、ある意味では政治的な判断とも言えます。

一方、将来の工事で大幅な資金不足が見込まれることが明らかであるにも関わらず、なんの資金手当ても検討されていないということであれば、その資産価値にも影響して、マンションの売却時などに買いたたかれる原因にもなります。

また、経済情勢の変化や工法の進化などもあって、そもそも将来の工事コストを現時点で正確に予測することは不可能な面もあります。当面は次回の大規模修繕工事のコストを賄える形で修繕積立金の値上げを実施するというのも一つの方法論です。