主役は管理組合
マンション管理の主役は管理組合です。シンプルな原則です。しかし、実際にはこの当たり前の原則が十分に理解されておらず、問題を抱えている(あるいは問題があることにも気づいていない)マンションが数多く存在します。
マンション管理の問題は、大規模修繕工事の際などに顕在化します。問題のあるマンションでは修繕積立金が不足している場合が多く、十分な更新工事ができずにマンションの老朽化が加速度的に進むことになるからです。
マンションは多くの人にとっては重要な資産であり、購入の際には十分に比較検討をするはずですが、重要な資産の割に、その保全にはあまり意識が向けられていません。
管理組合の役員などという面倒な仕事は引き受けたくないというのが心情でしょう。運悪く引き受けても、契約している管理会社からの指示通りに業務をこなして、早く任期を終えたいと考えがちです。
しかしながら、管理会社は営利企業であって、ボランティアをしている訳ではありません。管理組合と利害が対立する場合もあります(実際、多くの利益相反がおきます)。管理組合は管理会社の仕事をチェックする必要がありますが、そのためには管理会社に対抗するだけの情報や知識を身に着けることも必要になります。
知識・情報格差が課題
多くのマンションが管理会社と委託契約を締結して、その管理事務を委託しています。管理組合による自主管理という手法もありますが、多くの場合はマンション購入時からすでに管理会社が決まっており、その後も契約を継続します。
一方、管理組合の役員は、輪番制になっているというマンションも多く、引継ぎがうまくできていないと、新任の理事長は何をしたらよいかも分からず、管理会社から言われるがままに書類に印鑑を押すだけということにもなりがちです。
このような場合、管理組合と管理会社の間に、大きな知識格差、情報格差が存在する状態が継続することになり、営利企業である管理会社には、その格差を利用して利益を上げたいという誘因が働く可能性があります。
管理組合が管理会社の仕事をチェックできていないと、毎年の管理に必要以上に高い経費や工事代金を支払うこととなり、いつまで経っても修繕積立金が貯まらないという状況に陥りかねません。
管理会社の仕事は管理組合のサポートであり、あくまでも主体は管理組合です。自分の財産を他人任せにしてもろくなことにはなりませんし、自分たちの財産は自分たちで保全するしかありません。
きちんとした日常管理ができているマンションとできていないマンションでは、将来的に大きな資産格差が付くことになります。
管理会社は営利企業
マンション管理会社は、利益を追求する営利企業です。当たり前のことですが、まずこの点をしっかり認識しなければなりません。
マンション管理には面倒なことが多く、専門的な知識が必要なため、通常、管理組合は管理会社と委託契約を結んで、そのサポートをお願いします。契約内容はマンションごと、管理会社ごとに違いはありますが、国土交通省からモデルとして「標準管理委託契約書」が示されており、多くはこのモデルに準拠したものになっています。
そして、管理会社はその契約内容に従って、マンションの管理業務を行い、管理組合はその対価として契約した管理費を支払います。まず、ここで少し注意すべきことは、契約書には管理にかかる費用が月額表示されている場合が多いということです。定期清掃や各種の設備点検は毎月実施する訳ではありませんが、すべてを月額料金に換算して提示していることがあります。こうした場合は、それらの料金は1回当りでは実質いくらなのか、そしてその金額は本当に妥当なものなのかをきちんと確認し直す必要があります。
また、管理会社によっては、定額の管理費以外でも、管理会社の都合で管理にかかった費用をすべて請求できるというような条項を加えた契約書を提示してくるところがあります。自分たちのマンションの契約書は「標準管理委託契約書」と比べてどの部分がどう異なるのかを確認しておくべきですし、問題があれば管理会社に対して修正を要求するべきです。
これらのことがきちんとできていないマンションは、結果的に日々の管理に余計なコストをかけることとなり、将来の修繕のための積立に資金をまわす余裕がなくなることになりがちです。